我が愛しのFunny Face。The Kinksのソングライターであり、プロデューサーであり、アレンジャーであり、そしてボーカリストと、いくつもの才能を持つRay Daveisは間違いなく、わたしの20代の頃の恋人でした(レイの意思は無視)。彼を語らずして、わたしのロック人生は語れません。

キンクスと言う、ビートルズやストーンズと同時期にデヴューしたバンドのことを知ったのは「カム・ダンシング」のヒットを通してでした。当時高校生だったわたしにとって、ラジオで聞いたこの曲のかわいらしいメロディーと、その曲調に合った、ちょっと鼻にかかったかわいい声はとても記憶に残るものでした。しかし当時はキンクスがどういう歴史のどういうスタイルのバンドかと言うことは全く知らず、そのためこの1曲で「キンクス=あのかわいい曲のバンド」という図式が出来上がってしまいました。

その数年後、たまたまTVで見た「ユー・リアリー・ガット・ミー」のライヴフィルム(「ワン・フォー・ザ・ロードというアルバム&ビデオとしてリリースされています)を「あ〜あの『カム・ダンシング』のバンドだ」と何気なく見始めたのが運命の転機(笑)でした。

「カ・・・、カッコいい〜〜〜〜〜〜〜!!!」

あれ程までに「男の人の男の人らしさ」に惚れ惚れしたのはこのときが初めてだったかもしれません。なんてカッコいいんだろう。なんてわたし好み(笑)なんだろう。こんな男性がこの世にいたのか。
「これぞ、神が創りたもうた最高の芸術作品!!」
当時わたしはレイのことをこう評して、友人達からはおもいっきり爆笑されておりました。
背の高さ、身体の細さ、腕の長さ(それを強調する白のシャツ姿の美しさ)、挑発的なのにクールな目線、当時30代のまさに男盛り(?)のレイのライブパフォーマンスは、20歳の乙女心をカンタンに篭絡させてしまうのでした。

本格的なキンクス人生の始まりです(笑)。もっともっとキンクスの音楽を聴きたいと思いました。頃良く就職したわたしは、お給料をレコード購入に使いまくります。
こういう時って、何かの星回りが働くのでしょうか。当時けっこう雑誌に記事が載ってましたし、キンクスの古参ファンである方と知り合えたり、何かとわたしを深みにはまらせるような道が用意されて行くのであります。

キンクスの魅力はいろいろありますが、わたしが「他とは決定的に違う」と思ったのはやはり歌詞です。もちろんわたしは英語がわかるわけではないので、訳詞や、自分の乏しい英語力の中でわかる範囲のことですが。それを強く感じたのは「dead end street」です。初めて買ったキンクスのLP(2枚組ベスト盤)に入っていたシングル曲なのですが、

What are we living for?
Two-roomed apartment on the second floor.
No money coming in,
The rent collector's knocking, trying to get in.

We are strictly second class,
We don't understand,
Why we should be on dead end street.
People are living on dead end street.
Gonna die on dead end street.

この閉塞感。袋小路の様な人生に行き所をなくしかけている人々の絶望と怒り、66年のシングルですから、レイが弱冠22歳の時です。若いアイドル(?)が歌う内容ではないし、でもここには想像だけでは書けないリアリティがあって、「こういう風にこんなことを書けるひとがいるのか」と、驚きでした。しかもレイのあの声で歌うと、聴く側に与えるのは「暗さ」だけではない。これってスゴイ!(でもそこがキンクスが同期の中で一番マイナーと思われる所以なのかもしれないが。いっそとことん暗いほうが世間受けはいいのかもしれない)。
もちろん「all day and all of the night」のようなノリノリものもいいし、「waterloo sunset」のようにやさしい曲や「set me free」の鼻血モノのセクシーさもたまらない。
あんまり難しい言い回しとかがないんですよね。曲調も上品なのが多くて、アレンジセンスは多彩(これも天才技だと思う)。レーベルが変わると表現の仕方もちょっと変わりますが、それに違和感を覚えることはありませんでした。RCA時代のロックオペラシリーズはキンクスならではのボードヴィルちっくな魅力が素晴らしいし、評判が悪い(?)アリスタ時代に関しては「come dancing」から入ったわたしに何の文句がありましょう(笑)

聴けば聴くほど、ファンになりました。キンクスはそのバンド名から「ひねくれてる」とか「皮肉屋」「冷笑家」などといわれますが、こういうことを感じる方はキンクスを聴かなくてよろしい。どこがひねくれてるよ?言ってみ?レイの書く詞は皆がとても理解しやすい感情を描いてると思うのですが。(全てが満たされていて、幸福感しか抱いたことのないひとにはわからないかもしれないですケド)

これほどまでに音楽性が好きという気持ちと、ルックスが好きという気持ちがピッタリ合致することって珍しいんじゃないかというくらい。「音楽聴くのに、ミュージシャンのルックスなんて関係ない」といわれる方もおられますでしょう。まったくその通りです。ほんとに好きならルックスなんて関係ないのかもしれません。
だけどわたしはオンナなんだも〜ん!!相手がカッコいいにこしたことはないのですぅ!現実の恋愛だってそうでしょ?ハンサムかどうかじゃなくて、あくまでも自分にとって好みかどうか。
そういう意味でも、レイ・デイヴィスはわたしにとって「運命の男性」なのです。
そしてレイデイヴィスという稀代のミュージシャンをこれほどまでに愛せる自分は、ホントに幸運なロックファンだなあと思います。

すぅぃーとで、切なくて、ちょっと可笑しい、哀しい世界。
恋人のように、親しい友人のように、通りすがりの他人のように。
わたしの心に響き続ける、レイ・デイヴィスの声なのです。
ray davies
(the kinks)
キンクスのアルバムはとても多いです。
なので、別室を作りました。でもわたしの勝手な思い込み&ミーハーな視点から出来上がってますので、それでもよろしければ、どうぞお入りくださいませ。
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